図書館で出会った奥さん

図書館で借りた本に栞が挟まってた。

タティングレースで編んだいかにも手作りっぽい可愛いしおりは、

すごく手が込んでる様に見えたから、返却する時に司書さんに頼んだ。

俺より前に借りた何人かのうちの誰かが忘れたものだと思ったので。

「すごくきれいで勿体無いので、できれば返してあげて下さい」
「はい、お預かりします」

自分で頼んでおいてアレだけど、そんなの本来の仕事じゃないだろうに、

いわゆる文学少女がそのまま大人になったみたいなメガネの司書さんは、

愛想良く笑った。きっとこの人に預かってもらえれば持ち主に戻るって、

根拠も無く俺は思った。そういう笑顔だったね。

自分の手を離れて安心してしまい、そんな事すっかり忘れた一ヶ月後の

図書館で、司書さんに話しかけられた。

「あの栞、ちゃんとお返ししておきました」

「あー、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ、ありがとうございました」

「?」

改めて司書さんにお礼言われたのがいまいち腑に落ちなかったが、

その理由は後で解った。

栞は司書さんが自分で本を借りた時に挟んだままにしてしまったもので、

編み物も得意な本人の手作り。その場でお礼を言いたかったけど、

利用者の情報は秘密厳守なので、ひとまず、預かったということにした

というのが真相だった。あれは素で嬉しかった笑顔だったのね。

てなわけで、その司書さんが嫁です。